ハンターハンターのキメラアント編でゼノがネテロ会長の百式観音について語るシーンで「確かにある」という時間感覚に関する矛盾について誰かに語り出しています。
具体的に作品中で描かれているのはHUNTER×HUNTERのコミック25巻「No.264 突入④」で急に場面が変わり時系列も入れ替わってゼノが登場しています。
このシーンは深読みするとかなり深い考察ができます。
「確かにある」というセリフは「心滴拳聴(しんてきけんちょう)」と呼ばれる語句に掛かるわけですが、このシーンが描かれている場所は一体どこで、話している相手は誰で、いつゼノから語られた内容なのかというのが明確にはなっていないわけです。
このあたりのネット上の意見なども踏まえて、考えられるパターンや考察するのに必要な条件なども考えてみたいと思います。
話している相手は誰なのか
ゼノが話している相手が誰なのかという部分ですが、これは明確に相手が誰かわからないように隠されているので伏線か技法的なものが使われているという事です。
ゼノが語っている場所と時系列についても考慮が必要です。
まず場所についてですがゾルディック家の屋敷内のどこかという可能性が高いです。
龍といえばゼノの念能力と一致するので食器や家具の装飾は趣味という事も考えられます。ちなみにシルバの自室の雰囲気とはまるで違うんですよね。
もう少し可能性の話をするとカキン帝国のどこかというのが考えられます。ゼノが豪華な感じの食事をしていて食器や家具に龍の装飾があるからです。
キメラアント編はカキン帝国での未発見の生物調査から始まってます。龍といえば中国っぽいイメージがあって、キメラアントの女王を助けるための研究チームの医者も中国人のような名前でした。
するとゼノがカキン帝国でハンター協会絡みの仕事の打ち合わせをしていた可能性もありえます。
もう一つ考慮すべき点が時系列についてです。
ゼノが「心滴拳聴」について語り出しているシーンの前後を考えるとハンターハンターの作品内での現在時間は東ゴルトー共和国での宮殿突入のタイミングです。
ゼノは「龍星 群(ドラゴンダイブ)」を使った直後で宮殿の上空にいます。
するとこのカメラ目線でのシーンは東ゴルトー共和国での宮殿突入時を基準にすると、過去か未来かというのが気になるわけです。
百式観音の説明という事と会話の内容からするとネテロは生きてそうな話し方にも思えるので過去っぽいのですが、「心滴拳聴」に掛かってくるシーンでもあるので解釈の仕方によっては未来であっても辻褄はあいそうです。
それでは誰に対してゼノが話しているのかの候補を見ていきます。
シルバ説
一番しっくりくるのがゼノの身内のシルバです。
実際に王と王直属護衛軍の分断をする作戦の内容を知っていますし、ネテロ会長を宮殿上空まで運んで待機するという役割で作戦の一部には参加しています。
ネテロ会長の念能力を話す行為に対してもそれほど違和感を感じません。
時系列に関しては作戦決行の前の方がしっくりくると最初は思ったのですが、ゼノ自身が「心滴拳聴」を経験するのはページ的に「確かにある」のセリフの後になっています。
「龍星 群(ドラゴンダイブ)」の巻き添えで血に染まったコムギを抱える王を見て時間が止まった時と、戦う場所を変えようと王から提案があった時にネテロとゼノの横を王が横切った時です。
この時の経験をHUNTER×HUNTERのコミック26巻「No.278 破壊」の最後のページでシルバに対して語っています。
ゼノ「おお!そうじゃ今日なレアな体験したぞ。時間がな!ギュ~~~ッと凝縮されてな。」
ゼノの「心滴拳聴」の説明はこの体験の後にされないとしっくりこないというか信憑性にかけるように思えます。
時系列のタイミングとしてはシルバとゼノがゾルディック家に戻って、ネテロ会長が死んだニュースが流れる前に行われた会話という流れが一番しっくりくるのかなと思います。
キルア説
キルアがキメラアントの討伐隊に参加している事はネテロ会長の口からゼノには伝えられていたはずです。
宮殿では直接会ってないシルバがキルアがいる事を知っていたからです。
キメラアント討伐に参加していたゾルディック家の身内のキルア説が候補に上がるのは必然です。
キルアも「心滴拳聴」はキメラアント編で体験しています。
ただ時系列のタイミング的にはキルアだと苦しいところがあります。
キルアが自分の家に帰ったであろうタイミングはグリードアイランド編のハンター試験で現実世界に戻った時と会長選挙編でアルカとナニカを家から連れ出した時です。
仮にこの時に話すのはストーリーの流れとして違和感が出てしまうという事です。
ちなみにキルアに関しては宮殿突入時にゼノの「龍星 群(ドラゴンダイブ)」をなぜか知っていたのかという疑問もあり、ゼノとの話し相手という説の根拠になっていたりもします。
一般の記者説
ゼノと話している相手が描かれずにカメラ目線のような描写なのでメディアから何らかのインタビューを受けているという説です。
ただこれはありえないと思います。
一般人に念の事を話しても通じないですし、ハンター協会では一般人に対しては秘匿としている内容をわざわざ話す理由がありません。
それとネテロ会長の念能力を他人にバラすというのも考えられないです。
パリストン説
いろいろ考えたり思いつく人はいてパリストンじゃないのかと考える人もいるようです。
確かにキメラアント編でパリストンは1度も出てきませんでしたが、副会長についてからはネテロ会長のジャマをして楽しんでいたようです。
ネテロ会長は王と王直属護衛軍の分断をする作戦の依頼にゼノに会いに行っているので、その後に打ち合わせでパリストンとも会っている可能性はあります。
例えばネテロ会長との集合場所の連絡やお金の振込みなどに関してです。
後はビーンズあたりもハンター協会事務員としてはありそうですが、ネテロ会長の念能力や強さについては興味はないかと思います。
そしてハンター協会の仕事だったとしてもネテロ会長の念能力をわざわざ他のハンターには話さないと思うのでパリストンも可能性は低いと思います。
読者説
時系列などを全ての諸条件を無視して成り立つのがゼノが読者に対しての解説をしているという説です。
本来はナレーションによっての解説になるところをゼノに語らせたという技法的な描写にしたという事です。
百式観音と心滴拳聴はあの時点で読者に対して伏線を張る必要があってナレーション役として語らせるのに最適な人物がゼノだったという説です。
実際に板垣恵介さんの作品の「グラップラー刃牙」シリーズにおいてよく使われている手法があり、読者に向けた技法的な描写を冨樫義博先生が使ったかもしれないという事です。
深読みでの考察
深く考えれば際限ないほど想像が膨らみ、楽しいのがハンターハンターという作品です。
ただいろいろ設定的には苦しくなる部分もあったりします。
例えば現実世界の携帯やインターネットについてはハンターハンターの作品内でも描かれているわけですが、作品内の時間の経過は2年未満にも関わらず現実世界は20年近く連載が続いていて、その間のIT技術の進歩はめまぐるしいわけです。
作品内は現実世界の設定を取り入れたりしているので矛盾が出る可能性もあったりします。
もしキルア説を成り立たせるならテレビ電話のようなモニタ越しでの会話というのもあるのかなと思います。
ネテロ会長の強さの秘密を知りたがっている相手というとキルアっぽいんですよね。
シルバはネテロ会長の強さや念能力にはあまり興味がなさそうな気がします。
ゼノが食事中にシルバとキルアの両方に語っていて、キルアは別の場所でモニタを通して聞いているというようなケースなども深読みしすぎた感じで想像する事も可能なわけです。
キルアがゼノの技を知っていた理由
東ゴルトー共和国の宮殿突入時にキルアがゼノの「龍星 群(ドラゴンダイブ)」を知っていた事が設定上矛盾しているという意見があります。
確かにキルアが念を知り基本の四大行を習得したのは天空闘技場での事です。
その後にゼノに会って「龍星 群(ドラゴンダイブ)」を見せてもらえるタイミングはグリードアイランド編でハンター試験を受けに一度ゲーム外に出た時にククルーマウンテンに一度戻ったという意外のタイミングはなさそうです。
キルアが武器として使い出した兄貴特注のヨーヨーを受け取ったのもこのタイミングでしかないわけです。
でもこの時にネテロ会長の強さの話をして「龍星 群(ドラゴンダイブ)」を見せるというのは少し流れ的に違和感が残ります。
確かにこれは冨樫義博先生の設定ミスの可能性もありそうです。
後付の設定とかは矛盾や破綻を生む可能性があったりして、作品の設定を台無しにしてしまうと残念な事になったりします。
設定を大事にしているファンの人の目はかなり厳しいですからね。
ファンでなくアンチの立場で設定の矛盾に目を光らせている人もいると思います。笑。
一応この部分を辻褄を合わせて私が自分なりに解釈するとキルアは小さい頃に既にゼノの「龍星 群(ドラゴンダイブ)」を見ていたけどイルミの針によって記憶を封印されていたという事であれば辻褄は合わせれそうです。
キルアの兄弟の中で最年少の弟のカルトがかなりの念使いなので、キルアは元々念を使えていたのをイルミの針によって封印されたか、「龍星 群(ドラゴンダイブ)」をキルアにも見える状態でゼノが見せた事があったけど記憶のみをイルミの針で封印されたかという事も考えられます。
記憶喪失は現実社会でも何らかのショックで普通に起きる症状なのでイルミほどの強力な念能力者であれば記憶を封印するのも可能だと思えるわけです。
まとめ
ゼノがカメラ目線で「確かにある」と話しだした相手が誰だったのかですが、一番矛盾がなく無難なのは読者説かなと思います。
語っている場所や時系列の整合性、相手が見えないというカメラ目線の描写も辻褄があいます。
私の中では無難なところを選ばずにしっかりとした伏線の元での描写だったとするならばシルバ説を推したいと思います。
時系列的に宮殿突入前か後かを選ぶなら、時間感覚の矛盾と関連させて宮殿突入後にククルーマウンテンに帰ってから話されているに1票です。
というかハンターハンターはちょっと疑問に思えるような描写というか、読者に考えさせるような描写が入ったらあまりにもたくさんの考察するネタが出てきますよね。笑。
私は考察ジャンルというものの存在を知らなかった時は深く考えて読んでいませんでしたけど、ハンターハンターは中々に奥の深い作品だと感じるようになりました。